大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岐阜地方裁判所 平成2年(ワ)112号 判決

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  原告の請求

被告は原告に対し、金三四二六万三七六〇円及びこれに対する昭和六二年三月一六日から支払い済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二  主張

一  請求の原因

1  原告、被告はいずれも株式会社である。

2  原告と被告は、昭和六一年六月三〇日建築工事共同企業体協定書(以下、本件共同企業体協定という。)に基づき高垣カツラ建設工事共同企業体と称する共同企業体(以下、本件共同企業体という。)を結成した。右共同企業体の代表者は被告であり、出資割合は原告、被告それぞれ五〇パーセントである。

3  昭和六一年六月三〇日ころ、右共同企業体協定とは別に、原告と被告の間において口頭で、発注者より支払われた請負代金について、原告、被告が費用を負担した日時まで、右請負代金を各五〇パーセント宛て、精算するものとする旨合意された。

4  本件共同企業体は、昭和六一年八月七日郡上広域行政事務組合(以下、訴外組合という。)との間において次のとおり請負契約を締結した。

(一) 工事名 郡上広域行政事務組合郡上中央病院増設工事のうち建築工事(以下、本件工事という。)

(二) 工事場所 岐阜県郡上郡八幡町島谷一二六四番地の一外

(三) 工期 着工 昭和六一年八月一一日

完成 昭和六二年一一月三〇日

(四) 請負代金 三億六四〇〇万円

なお、昭和六一年度工事請負額は一億七一六〇万円

5  原告は昭和六二年二月二八日に岐阜地方裁判所に和議の申立をなし、右工事を中止したが、同日までの出来高は、昭和六一年度工事請負額一億七一六〇万円のうち六二・七二パーセントで、金額にして一億〇七六二万七五二〇円である。

したがって、原告の受け取るべき工事代金は、右出来高の二分の一である五三八一万三七六〇円から既に受領済みである一九五五万円を差し引いた残額三四二六万三七六〇円である。

6  被告は訴外組合から昭和六二年三月一〇日五七七〇万円が入金したのに残額の支払いをしない。

7  よって、原告は被告に対し、右3記載の特約に基づき精算金三四二六万三七六〇円及びこれに対する昭和六二年三月一六日から支払い済みまで年六分の遅延損害金の支払いを求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1、2は認める。

2  同3は否認する。

3  同4は認める。ただし、請負代金は三億五六九三万七〇〇〇円に減額変更となり、また、昭和六一年八月一一日から同六二年三月三一日までの第一期工事分請負額は一億七一六〇万円である。

4  同5につき被告は当初自白したが、その後右自白は真実に反し錯誤に基づくものであるとして撤回し、原告が昭和六二年二月二八日に岐阜地方裁判所へ和議の申立をしたこと、原告が被告より一九五五万円を受領済みであることを認め、その余は否認すると述べた。原告は右自白の撤回に異議を述べた。

5  同6は認める。

6  同7は争う。

三  被告の主張及び抗弁

(被告の主張)

1 発注者訴外組合から被告に対し支払われた部分払いの工事代金支払いの状況は次のとおりである。

(一) 被告受領日 昭和六一年一二月二二日

受領金額 三九一〇万円(ただし、出来形価格相当額の約一〇分の九の金額)

出来形検査日 昭和六一年一二月五日

第一期工事分出来形 二五・〇三パーセント

工事期間 昭和六一年八月一一日から同六二年三月三一日まで

(二) 被告受領日 昭和六二年三月一〇日

受領金額 五七七〇万円(ただし、出来形価格相当額の約一〇分の九の金額)

出来形検査日 昭和六二年三月二日

第一期工事分出来形 六二・七二パーセント

工事期間 昭和六一年一二月六日から出来形検査日まで

2 被告は原告に対し昭和六一年一二月二三日は三九一〇万円の五〇パーセントである一九五五万円を支払った。

3 原告は被告と昭和六一年六月三〇日締結した本件共同企業体協定において「決算の結果利益を生じた場合において、脱退構成員には利益金の配当は行わない」ことを約定した。

4 本件工事に関し、原告が出資金として負担すべき下請業者に対する代金債務のうち、昭和六二年一月二〇日ころ(遅くとも同年同月三〇日)までの期間のものについて、原告は昭和六二年二月一六日に支払ったが、同年一月二一日(遅くとも同年二月一日)以降の分について原告はまったく支払っていない。

5 原告は被告に対し昭和六二年二月二七日本件共同企業体から脱退することを表明し、同日本件工事を中止した。

6 したがって、原告は本件共同企業体への出資義務を履行していないので、本件工事に関し何らの請求権を有しない。

(抗弁)

仮に原告が被告に対し何らかの金銭債権を有するとしても、被告はその金銭債権を受働債権とし、以下の債権を自働債権として対当額で相殺する。

1 貸付金三〇〇〇万円

被告は昭和六二年二月二〇日原告に対し三〇〇〇万円を貸し付けた。

2 求償債権九二四万八七四一円

被告は原告が負担すべき下請関係者に対する工事代金を別紙代払表記載のとおり支払った。その合計額は九二四万八七四一円である。

四  抗弁に対する認否

抗弁のうち貸付金は認め、その余は争う。

五  再抗弁

1  本件原告の債権は和議開始後に発生したものであって、和議法五条、破産法一〇四条一号により相殺は許されない。

2  原告が被告に対し請求している精算金は、昭和六二年二月末日までの工事代金に関するもので、原告の和議申立後に被告に入金された。したがって、和議法五条、破産法一〇四条二号本文により相殺は許されない。

六  再抗弁に対する認否

否認する。原告の債権は、原告と被告が昭和六一年六月三〇日締結した本件共同企業体協定、訴外組合と本件共同企業体とが昭和六一年八月七日締結した本件請負契約に基づくものであるから、受働債権の原因発生日は昭和六一年八月七日であり、原告が和議申立をした昭和六二年二月二八日以前に発生したものである。

第三  証拠(省略)

(別紙)

〈省略〉

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例